2010年06月08日 09:20
高校生が底辺を支えているエアライフル。改正銃刀法の施行で、高校生の育成、練習環境の将来に不透明感が漂っている=2008年の県高校総体
 銃の所持要件を厳格化した改正銃刀法が、エアライフル競技の関係者に波紋を呼んでいる。新たな資格制度の導入で原則として18歳未満は自分の銃が持てず、練習や大会参加に大きな影響が出るとみられるからだ。また大会期間中に新資格の選手が18歳になった場合、別の手続きが必要になるため、競技に参加できない可能性もあるという。

 長崎県佐世保市で2007年に起きた凶悪事件などを受け、改正銃刀法は去年12月に施行された。14歳以上18歳未満を対象に、指導者らが所持する銃を撃つことができる「年少射撃資格制度」を新設。銃所持歴2年以上の指導員が常時、監督する制度も取り入れられた。

 改正前は18歳未満でも競技団体などの推薦などでエアライフルの所持が許可され、18歳になってもそのまま所持できた。しかし改正後は18歳未満は原則として銃を所持できなくなり、例外として認められる場合も、条件が従来の「国体出場級」から「国際規模の大会出場」の選手に“ハードル”が上がったためだ。

 県内の高校で唯一、エアライフルに取り組む南陽高ライフル射撃部では、主力選手の2、3年生10人は改正法施行前に諸手続きを済ませ、先の県高校総体や、全国高校総体などへの影響はないという。しかし今の1年生以下の選手に銃の所持が認められるか、これまでのような練習環境が確保できるかは不透明だ。

 同部の加地信彦監督は、全国上位を狙うためにも選手が自分の銃を持つ環境が必要だと説明する。「借りた銃で競技する場合、仕事のある指導員が長期間の休暇を取って遠征、大会に同行しなければならない。練習に必ず立ち会う必要もあるため、生徒たちの練習時間も制約される。現実的に不可能だ」

 また、年少射撃資格で競技を行う場合、18歳になった時点で新たな所持資格が必要になる。「大会期間中や直前に18歳の誕生日を迎えた場合、年少射撃資格は失効する。講習会受講や公安委員会の許可といった手続きが間に合わなければ参加できないこともあり得る」と加地監督。

 「改正法は、エアライフル競技の強化にはつながらないのでは」と話すのは、県高体連ライフル射撃専門部の秋場規孝委員長。「競技実績を持たず、高校から始めたいという生徒にどのような影響がでるのかが不安だ」と、五輪競技でもあるエアライフルの底辺を支える高校生の競技人口減少を懸念する。加地監督は「山形県警の対応は丁寧だが、裁量にも限度があるだろう。全国的な議論が必要だ」と訴えている。
http://yamagata-np.jp/news/201006/08/kj_2010060800110.php